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VFXメモ!

映画レビュー「エンジェル・ウォーズ」

ザック・スナイダーの監督作品は、これ以外だと「300」と「マン・オブ・スティール」くらいしか見ていませんが、本作が一番個性的な作品だろうと思います。

「エンジェル・ウォーズ」


予告編


あらすじ
幻想的な世界に閉じ込められたベイビードール(エミリー・ブラウニング)は、バーチャル兵器を使いこなす4人の女戦士を集め、自由を求めて戦うことに。想像の世界の中でワイズマン(スコット・グレン)の手助けを受けた彼女たちは成功すれば自由を手に入れることができるが、そのためにはある犠牲を強いられる運命にあった。
(Yahoo!映画より抜粋)

精神病院に入れられた少女が、妄想の中のそのまた妄想の中に潜って行きながら、現実を生き抜く力を獲得していく物語。

かなりオタク趣味全快な作風だけど、私は結講好きな部類の映画です。
よくこのテの映画を「監督のオ○ニー映画だ」と揶揄する意見も目にしますが、1本の映画に具現化している時点で、単なる「監督の自己満足による妄想」の域はとっくに乗り越えていますよね。それだけでアッパレです。

閉じた世界観。だがそこがいい
「300」同様、グリーンバックスタジオで撮影しVFXを多用して描かれた世界観は圧巻です。それでいて、「妄想の世界」という閉じた空間、非現実世界の雰囲気がこの手法とマッチしていて、「300」以上に効果的な映像になっていたと思います。

意志によってスピードが変わる
スローモーションと早回しを多用したテンポも独特です。本作では、「現実」「妄想」「そのまた妄想」という段階によって、映像スピードにも違いがあったような気がします。
例えば冒頭なんかはほぼ全部スロー(笑)。
「現実」や「妄想」の段階では、「服からちぎれて床に落ちるボタン」「窓を伝う雨」「
精神病院の入り口から”劇場”までの移動」「葉巻の煙」「靴に落ちる葉巻の灰」など、極端なクローズアップとともに時間の流れが変わります。主人公の意志が介在しない、放っておいても流れて行ってしまう時間という感じ。主人公の絶望的な無力感がヒシヒシと伝わってきます。
それとは逆に、戦闘シーンの妄想ではスローと早回しが主人公たちのアクションに会わせてリズミカルに変わって行きます。
主人公達の意志が反映されていて、ストレートに力強さが演出されていました。

ちなみに「妄想」→「そのまた妄想」に世界が映って行く様は、カットやエフェクトをかけずに長回しでシームレスに変化していきます。映像スピードの変化と同様、「異なる空間、異なる感覚」が断絶せずに移ろっていく映像は独特で面白かったです。

一粒で二度も三度も楽しめる衣装変化
妄想の段階によって、キャラクターの服装が変わって行くのも楽しみの一つ。
戦闘シーンの妄想世界では、「女子高生」「騎士」「ナース」「キャビンアテンダント(?)」と、個性豊かでここでも趣味が炸裂してますね。
個人的に好きだったのは「ナース」のロケットさん。この人がまたいい人で、こういう人に親切にされると私なんかはコロッとやられちゃいますね。ナース姿もセクスィーでした。もうどうしようもねえや。

本当の戦いはこれからだ
結末の展開は「300」とも共通していたような気がします。
犠牲を伴う苦い勝利、そしてその思いを受け継いだ者たちが立ち上がる。
ここに監督ザック・スナイダーの映画観が現れているような気がしますね。
ただ妄想で自己満足してたってしょうがない。映画館を一歩でた瞬間からそこはバトルフィールド。
現実と戦うためにこそ映画って必要なのだなあ。

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